「収縮するマイクロバブル」と「収縮しないマイクロバブル」、この2つには本質的な差異があります。なぜなら、前者のは、「超高速旋回法」という特殊な発生方式でないと生成されないマイクロバブルだからです。

  この超高速旋回式のマイクロバブル発生装置によって発生したマイクロバブルが、非常に特殊な新物質であり、そのほとんどが収縮する「マイクロバブル」なのです。

 この特殊なマイクロバブルを世界で初めて発生装置を1995年に完成させ、以後、この技術を広めてきて、今日に至っています。

 また、それが世界で初めてのオリジナル技術であったことは、その後の世界32カ国における特許取得によっても証明されることになりました。

 そこで、「収縮するマイクロバブル」があるならば、それとは逆の「収縮しないマイクロバブル」があるかどうかが気になるところです。

 これに関しては、ある大手ガス会社の子会社の技術者が、自ら製作した装置を持ち込んで実験をしたことがあります。

 それは、2台のポンプを連結させて強制的に空気を送り込み、いわゆる「加圧溶解」させる方式のものでした。

 この加圧溶解させた水を減圧弁を通過させて圧力低下させるときに、いわゆる「白濁泡」が出てきます。見た目が白いので、「これぞ、マイクロバブルである」と色めきたった人が少なくありませんでした。

 これで、私が開発した「超高速旋回式のマイクロバブル」と「対抗」できると思ったのでしょう。あるいは、「そのマイクロバブルと効果が同じであってほしい」と過度な期待を寄せられたのかもしれません。

 のちほど結果を詳しく述べますが、この加圧溶解式で発生した「マイクロバブル」は、超高速旋回式のそれとはまったく正反対の性質を有する「マイクロバブル」でした。

 上記の「対抗」に関しては、見た目だけで、他には、ほとんど「活性」が見出されませんでしたので、その当時者たちは、見た目の「癒(いや)し系マイクロバブル」でいくしかない、それでもよいといい出す始末でした。

 この加圧溶解式のマイクロバブルが出始めると、さっそく、それに便乗した見解が出てきました。これが、マイクロバブルを濃度で分類する方法でした。

 「マイクロバブルには、高濃度、中濃度、低濃度の三種類がある」

 こういわれると、なにか高濃度がよさそうに思えますが、その分類には、マイクロバブルの機能性のことは捨象されていることが特徴でした。

 高濃度であっても機能性が優れていなければ、何の意味もありません。さらに、低濃度であっても、優れた機能性があり、その目的を達成することができるのであれば 、それで十分であるといえます。

 そこで、せっかくですから、持ち込まれた「加圧溶解式のマイクロバブル」の性質を詳しく調べてみました。

 まずは、それが「なぜ白く見えるか」という問題です。これを明らかにすることは、「白い泡に騙されるな!」という命題にも結び付く問題ですので、非常に重要な課題といえます。

 私の研究室には、マイクロスコープという非常に便利な装置があります。顕微鏡のように、小さいものを拡大して見ることができるのですが、顕微鏡のように上下ですぐにピントがずれることがなく、あるていど奥行きも含めて撮影することができるのです。

 このマイクロスコープを用いて、この白濁した加圧溶解式のマイクロバブルを撮影しました。結果は、そのほとんどが、直径50、60マイクロメートル以上の直径のものであり、これらが「白濁して見える」原因であることが判明しました。

 つまり、白濁泡の正体は比較的大きなマイクロバブルであり、それゆえに、「白く見える」にすぎないのです。

 しかし、ここで紛らわしいのは、この白濁泡を、未だに、「ナノバブル」といってはばからない方もおられるようで、これも「要注意」といっておきましょう。

 周知のように、ナノ粒子は、固体であっても透明であり、ナノバブルが存在するとすれば、それも透明なはずで、白濁泡がナノバブルであるはずがありません。

 となると、大きい順に並べますと、次のような分類が可能となります。

 ・ミリバブル:ミリメートルサイズの気泡、白色

 加圧溶解式の数十マイクロメートル~数百マイクロメートルの気泡:白濁

 ・超高速旋回式のマイクロバブル:発生時に20マイクロメートル前後の気泡、発生後は収縮、薄い白色か透明

 ・ナノバブル:透明

 このような分類を行うと、「白濁泡に騙されるな!」という意味がよくおわかりになるのではないでしょうか(つづく)。


J0395402