こうして、いつのまにか、マイクロバブルによる植物活性観察グループができあがってしまいました。ときには彼女を中心にして、そして大半は彼女のことをあまり意識せずに、その日々が繰り返されることになりました。
「今度はこうしてみよう、なにか、もっと面白い植物はないか? なぜ、うまく育たないのであろうか?」など、いろいろなことをいいながら、その観察が続いていきました。
あるとき、学生と一緒に園芸店を訪れました。「なにか、面白いものはないか」と好奇心を示しながら、園芸店中を探しまわりましたら、あるものが、棚の一角にありました。
「これは、どうであろうか?水耕栽培で育つであろうか?」
こう尋ねても、学生がわかるはずもありません。 「よくわからないけど、とにかくやってみようか?」
「えっ!ほんとんにやるんですか?」
こういわれると、ますますやる気になるのが私の性格ですので、こういってのけました。
「これを、水でだれも育てたことがなかったら、初めてのことになる。だからすばらしいだよ!やってみようよ!」
こうして、3種類を買ってきて、さっそく、マイクロバブル水槽に入れて試してみることにしました。これについては、当の彼女は、何もわからなかったので、ふしぎと何も抵抗せずにいわれたままに、これを育ててくれました。
そして、無謀とも思われた試みの結果は、1勝1敗1引き分けとなりました。まずは、その1敗からですが、それは水の中ですぐに腐り始め、異臭を発しました。
これを除去し、残る2つに賭けたのですが、これらがなんとすくすくと成長しはじめ、「これはすごい!」といい始めることになりました。
とくに、そのひとつは、まことに生育が順調で、これはマイクロバブルの水耕栽培に適していることが判明しました。
「やはり、適、不適があるのだ!これはやってみないとわからないね」
こういうと、そばの彼女がもっともらしく頷いていました。また、引き分けのもうひとつは、途中で育ちが鈍くなり、当初の期待が薄れていきました。
これには、基本的な栄養不足、日照不足が影響しており、同じ水槽のなかなので、その照射に栄養を吸い取られてしまったのかもしれません。
しかし、このひとつの勝利だけでも貴重なもので、マイクロバブル栽培においては根がすごいのですが、この栽培においては、驚くほどの根が成長していきました。
そして、この結果が彼女の卒業研究の成果のメインとなりました。こうなると、彼女も卒業研究も立派なものであり、どこに出しても恥ずかしくないという段階に達したのでした。
「この根も、彼女のように成功していった」
あとで、このように思うようになりました。
そこで、実験においては、次の4課題が浮き彫りになりました。
①栄養不足(ある意味で、それを最小限にして栽培を行ったので、しかたがなかった)
②日照不足(これが決定的だった)
③経験不足(これは少しかいぜんできた)
④装置の能力不足(これは改良の余地あり、とくに、マイクロバブル発生装置と水中ポンプの組み合わせが問題)を検討する必要がある(つづく)。
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