第2回土木学会全国高専学術講演会の2日目が、豊橋技術科学大学で開催されました。
この日のハイライトは、なんといっても、三浦望(大分高専都市システム工学科5年卒業生)さんによる土木教育賞の受賞講演でした。
まず、彼女の堂々とした発表ぶり、プレゼンテーション能力の高さに驚き、感動しました。
わずか、20歳の学生が、いろいろな困難を乗り越えて、国際的に活躍しながら成長していった姿が、目の前の彼女であると思うと、その教育成果はとてつもないものであったと思いました。
彼女の取り組みは、タイに足踏みミシンを送る活動から始まりました。
日本では使用しなくなった足踏みミシンがタイの田舎では、いまでも重要な役割を果たしており、それは、未開地へ「ミシン」という生活道具を送って、現地のみなさんの生活に役立つという行為でした。
そして三浦さんは、同級生とともに、そのタイの現地を訪問し、壊れたミシンを修理し、それで塗った着物を作ります。現地の方々からは、そこで縫われた布で洋服をプレゼントされます。
ここでは、足踏みミシンという技術が架け橋になって、これらの貴重な経験がなされることになりました。もちろん、彼女らが現地の方々と交流したことには、大変な意味がありました。
その三浦さん、数々の国際交流を積極的に行おうとするなかで、そこには英語で会話ができるかどうか、この問題が深刻に問われました。
何もしゃべれなくて、気まずくなり、自己嫌悪に陥ったこともありました。しかし、彼女にとっては、それが出直しのバネになり、今度こそはと、その克服により積極的になり、その課題を克服していったのです。
この「前向き姿勢」が、彼女の発表にはよく現れていました。
その成果が現れたのが、シンガポールのポリテク(高専によく似た大学のような高等教育機関)における研修とその学生たちとの交流でした。今度は、英語を理解することができ、しゃべることができたのです。
そして、彼女は、次のように述べました。
「英語を話せるかどうかは、自らを話さなければならない環境に、どう置くかにある」
これは、その通りですね。苦労してきた彼女ならではの言葉だと思います。
さらに、今度は、ポリテクの学生を大分高専に招いて交流を行うことになりました。もちろん、彼女らが中心になって、シンガポールからの学生を迎え、交流を深めたことはいうまでもありません。
これらを見事になしとげたことが、土木教育賞にふさわしいと評価されたのです。もちろん、成績優秀で、クラブなど学生活動においても大活躍された彼女でした。
そして、その彼女の壁を次々に突破していった苦労が、彼女の成長へと結び付き、かくも誇らしげな彼女となり、一同の感動を呼ぶ迫力があったのです。
私は、講演を終えた彼女に、次のような質問と意見をいいました。
「卒業後は、民間会社に就職されると聞いていますが、そこでまたしっかり仕事をしていただいて、そこでまた勉強をしたいと考えるようになったら、技術科学大学に進学することを考えていただけますか?」
「あなたは、20歳ですから、大学の2年生に相当します。いまここに大学生がいたら、その成長ぶりを比較してみたくなります。よくがんばりましたね。豊橋技術科学大学の青木先生、彼女は、豊橋技術科学大学に編入学するのにふさわしい学生ではないですか?」
三浦さんの返事は、もちろん、検討しますというものでした。青木先生も、大歓迎とのことでした。
毎年、この賞を審査するときに思うのですが、このような学生たちが毎年輩出される「高専教育」、これは今の時代に合っているといいましょうか、そこに「重要な何か」があるような気がしています。
これから、さらに勉強して、坂本龍馬のように大活躍する若者になっていただきたいですね。
こうして、とても、さわやかな講演会となり、私も張り切って、「高専・技術科学大学連携の課題」を発表させていただきました。
また、特別講演では、豊橋技術科学大学の加藤史郎先生に、見事な建築に関する話をしていただき、これにも感激させていただきました。世界中の建築物(橋、ドーム、冷却塔など)をご自分で撮影され、その何十枚という写真をたっぷり見せていただきました。
また、その建築物の解説も、その都度行っていただき、思わず前のめりになるほど興味深いものでした。
そして、先生が、なぜこのような形態や構造になるのか、そして、それらに関連して土木と建築では、重要な相異があることを示していただき、それがまた興味を深めるという具合になりました。
まことに、すばらしい名講演(加藤先生は、この三月でご退官であり、それこそ、その最後を飾るものとなりました)であり、久しぶりに豊かな気分になりました。
三浦さん、加藤先生、どうもありがとうございました。
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