本日は、絶好の花見日和です。暖かく、風もなく、そして肝心の桜が満開で、さきほど緑地公園の桜の園のそばを通ると、みなさんが賑やかに宴を繰り広げておられました。

 春の日の平和で幸福な一時のような気がして、こちらも楽しくなりました。

 さて、当方は学生たちと食事会をして、その後に学会原稿執筆に関する打ち合わせをしています。これが初めての経験の学生にとっては、なかなか容易ではない課題と経験になります。

 まず、その原稿全体の要旨に関する議論を行います。その時に、学生たちに次のようにいいます。

 「今回の発表の目玉は何か。一言でいいなさい」

 こういうと、たいがいの学生が即座に答えることができません。そこで、さらに次のように尋ねます。

 「研究目的は何ですか?」

 ここでも明快に返事ができる学生はほとんどいません。

 「研究目的を一行で答えることができるようにすなさい」

 こういって、自分でやったことを復習して、その明確化を図ります。それができると、その目的に従った考察と結論が得られたかを考えさせます。

 こうして、論文の全体骨格ができあがっていきます。「どう書くか」が先ではなく、「どうこの基本骨格を作るかが大切なのですが、これは経験を積み重ねないとなかなか理解できないことのようです」

 今も、私の目の前で少し頭を抱えている学生がいるようですが、こういう方にはしっかり考えていただくことが重要です。

 さて、昨日は、ある新聞社の記者とじつに11年ぶりの再会を果たすことができました。それは、広島のカキ養殖の取材に来られ、次のような記事原稿が掲載されました。

 「広島湾では、年々水質が悪化し、それがカキ養殖に影響し、カキの大量斃死が起こるまでになった。それを防ごうと、広島湾では、2つの赤潮防止および水質浄化装置が導入され、それらの結果が注目されている」

 この記事で紹介されたのが、①プロペラ方式による海水拡散方式と②マイクロバブル方式の2つでした。もちろん、後者の方が、私が開発した装置でした。

 前者の方式は、海中おいて水深方向にパイプを入れて、その水を下からプロペラを回してくみ上げ、下層の無酸素水を水表面近くまで送り、水面近くの酸素が豊富な海水と混合拡散させて、酸素濃度を回復させ、それを下層に送水しようとするものでした。

 このような混合・拡散による送水方式は一見まもとものように見えますが、その思惑通りにはなりません。それは、下層の海水をくみ上げて上層の海水を混合させようとするときに、まず問題が起こります。

 なぜなら、下層の冷たい水と上層の温かい水が簡単に短時間に混ざらないために、上層で養殖しているカキに重大な影響を与える恐れがあるからでした。

 この「かき混ぜ方式」を採用するに当たり、カキ養殖業者が、その恐れを抱き、「カキが死んだらどうするのかと詰め寄ったのでしょう。

 これには自治体当局も困り果てて、「カキ筏あたり、その補償金として100万円を出します」という保証付きの装置になりました。

 それに対し、マイクロバブルには何の補償金要求がなく、自由そのものでした。

 プロペラ方式の問題の第2、これが一番の問題でしたが、下層と上層の海水をかき混ぜた後に、それを再び下層まで送水しなければなりません。

 その水をプロペラで送り込むようにするのですから、それは実現可能ですが、そのかき混ぜられた水は、下層の低温水と上層の高温水の混合水となります。

 当然のことながら、この混合水は下層の海水よりも温度が高いことから、それを入れても、横には広がらず、まっすぐ上に上昇してしまいます。せっかく入れた水を、そのまま上部に戻してしまうようになるのです。

 こうなりますと、まったく開発者の意図に反して、「予想外」のことが起きてしまいます。

 さて、この新聞記事によって世間の注目が集められた「競い合いの結果」はどうなったでしょうか。私が一方の当事者でなければとても楽しみなことでしたが、そのように悠長に眺めているわけにはいかず、それをじっと見守っていました。

 ところが、その決着は、あっさりとついてしまいました。プロペラ方式の装置の周りに設置されていたカキ筏が、そこからすべて逃亡してしまったからでした。

 カキを守り、育てるはずの装置の傍に、カキ筏がまったくなくなってしまったという珍事が起きてしまいました。

 このプロペラ方式は相当高価な価格と聞いていましたので、その費用はどうしたのか、その心配が少し胸の中をよぎったことを思い出すことができました。

 そして、もう一方のマイクロバブルの方は、すでに紹介してきたように大活躍を遂げ、その結果が私の人生までも変えることになっていきました。

 この記事は、拙著『マイクロバブルのすべて』にも掲載させていただいたのですが、そのような思い出の記事となったことを、この記者さんに告げると、とても喜んでおられました。

 あれから11年、お互いに年を重ねましたが、その分、マイクロバブル技術は着実な発展を遂げてきましたので、そのことを逐一説明させていただきましたところ、それらが彼の記者魂を相当刺激することになったようでした。

 こうして約2時間、びっしりとマイクロバブル技術の今日的到達点を詳しく説明させていただきました。

 「ところで、こちらにはいつ赴任されたのですか?」

 「昨日です」

 「そうですか、赴任早々、良い取材ができて、相当明るくなり、気分前向きになりましたね」

 かれは、「もちろん、そうです」という明るい返事をなされていました。

 さて、これから会議がありますので、本日は、この辺で終わりとさせていただきます。会議終了後は、私も、花見のみなさんと合流し、満開の桜を楽しませていただこうかと思っています。

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