③ふかいことをおもしろく

 これは名言ですね.「ふかい」からこそ「おもしろい」,ここに,その「極意」がありそうです.

 なぜ,そうなのか?

 それは,そのことばを裏返して考えてみるとわかりやすいと思います.

 「浅い,浅薄なものは,おもしろくない」

 これは,みなさんが認めるところです.

 「深みがないから,おもしろくない」

 これもすぐに理解していただけそうです.

 「ふかい」,これには,次のような言葉もあります.

 「母の愛は海よりも深し」

 自分の子供にどこまでも愛情を注ぎ込んで育てる姿が,そこにあります.

 これは母が子供の注ぎ込む姿のみに認められることではありません.

 たとえば,研究者が,全身全霊を打ち込んで研究を行う主題についても,ふかく愛情が注ぎ込まれます.

 それが,例えば無機物であっても,さらには,バーチャルのものであっても,その注ぎ方に変わりはなく,いつしか,その研究対象に愛情を注ぎ込むようになります.

 それは,それが,ふかい意味を内包しているからであり,その探求に長い時間と労力を要するからでもあります.

 それが,ふかい意味や内容,さらには,高い水準の社会的経済的価値を有するものであればあるほど,その愛情を注ぐようになり,同時に,そのことをおもしろく感じるようになるのです.

 昔,長野県上田市に行ったときに,京都大学の生物学者であった山本宣治さんが残した言葉の碑をみたことがありました.そこには,次のように刻まれていました.

 「人生は短し,学問は長し」

 私は,学生たちに,この言葉を紹介しながら,次のように尋ねてみることがあります.

 「トランプよりもおもしろいものは,なんですか?」

 ある学生が,「麻雀です」と答え,さらにある学生は「パチンコ」と返事をします.

 「麻雀やパチンコよりもおもしろいものはなんですか?」

 このように尋ね続けると,徐々に学生からの返事がなくなっていきます.

 「麻雀よりも,パチンコよりも,そして映画よりもおもしろいもの,それは何だと思いますか?」

 こういうと,学生たちは首をかしげて不思議な顔をします.

 「それは,学問です.みなさんは,そのおもしろさを理解したことがありません.こうして長い間,学問が存在してきたのは,それがおもしろいからです」

 学生の何人かは,「なあんだ,そんなことか」と肩を落としますが,残りは,「そうか,そんなに,おもしろいのか」と,本気で学問のことを考えるようになります.

 学問はふかく,そして長い歴史を有しています.汲みつくしたと思っていても,次々に新しいことが発見され,それが世の中に小さくない影響を与えるのです.

 マイクロバブルは,私がその端緒を切り拓いた学問研究のの一分野です.

 以来,寝ても覚めてもマイクロバブルのことを考えるようになり,おもしろくてたまらなくなりました.

 結果的に,それまで研究をしてきたことをすべて放り投げ,マイクロバブルをまっしぐらに研究してきて,やは四半世紀以上が経ちました.私の理解速度が遅いということはありますが,それだけ長く続けられるということは,奥がふかいのです.

 同時に,社会経済的価値が高く,そのすそ野が広いので,どこまでも広げられる奥深さを有しています.

 ですから,単なる専門研究者では,この課題に立ち向かうことができません.

 すぐに,その狭さ,浅薄さが露わになってしまい,続けられなくなってしまうことが少なくないからです.

 むずかしいことをやさしくいえば,マイクロバブルは「広くてふかい」海のようなものなのです.あるいは,広大なすそ野と深い樹海を有する富士山さんかもしれません.

 だからこそ,そこに漕ぎ出して進むことが「おもしろい」のであり,それを語れば「最高におもしろく」することもできるのです.

 「さびしいこともあるだろさ,かなしいこともあるだろさ,だけど,ぼくらはくじけない,進め!」

 昔,どこかで聞いたことがある歌です.

 同じように,私たちのマイクロバブル研究においても,それが,ふかくておもしろいから,「だけど,ぼくらはくじけない」という「強い思い」を抱かせていただいているような気がしています.

 すなわち,マイクロバブルの「ふかさ」が,「おもしろさ」とともに,「くじけない」という強い思いを醸し出させているのではないかと思います(つづく).

Tulips