昨日は、第62回土木学会中国支部の特別講演会が開催されました。講演者は、韓国嶺南大学の朴教授と山口大学の羽田野教授のお二人でした。

  朴教授の講演は、日本と同じように平地が少ない韓国の海岸部の軟弱地盤をどのように短期間で改善し、有効利用するかに関するものでした。

 なにせ、現地実験を含めたスケールの大きいもので、最大は、20km四方に及ぶものもあるそうです。

 この研究は、軟弱地盤といっても、ほとんど土砂混じりの浅い池みたいなところですので、その水をいかに効率よく排水するか、これが最大の問題でした。

 朴教授は、この地盤層内に浅い透水性のある開水路を簡易的に設置する方法を発明し、そこから強制的に水抜きをできるように工夫しました。

 これで驚くほど早期に表層土壌の水分が減少し、人が1mの高さから飛び降りても変形しない地盤づくりに成功しました。

 このような革新的地盤改良技術を用いて、韓国全土のおよそ10か所程度で、この工事や試験がなされていることが報告されました。

 時代と国力の違いでしょうか、日本では、このように大規模な工事や試験研究は、ほとんどなくなってしまいました。

 さて、問題は、この広大な土地利用をどのように行うかですが、これでも日韓においては、小さくない差異が生まれています。

 たとえば、その第1は、港とその物流基地の問題ですが、この土地改良には、その大規模な港や物流基づくりが含まれています。これは、単に韓国に留まらない世界規模での港および物流基地づくりを想定しています。

 いまや、日本では、このような港や基地づくりを行う構想はなくなってしまったのではないでしょうか。

 第2は、土地利用問題です。日本のように、埋め立てをしても、それが有効利用されない土地がいくつもあると、それは環境改変させるだけでほとんど意味がありません。

 韓国では、経済危機後の立ち直りが早く、その原動力は、国際戦略を主としたビジネス化を目指したことにあります。

 よくいわれるように、サムソン一社で、日本の電機系企業大手5社を併せても敵わなくなってしまいました。

 そして、電機系、自動車系の企業誘致は、地域の「自立できる経済」においてあまり役立たないとまでいわれるようになりました。

 明らかに小さくない差異が日韓において生まれており、それはますます看過できない問題になっているように思います。

 2番目の羽田野教授の講演は、昨年の防府地区の土砂災害に関するものでした。ここで、強調されていたのは、土石流の規模にしては、流れてきた土砂の量が非常に多く、今回は、これによって死亡事故が起きたという点でした。

 巨石は途中で止まってしまったのに対し、細かい土砂が下流まで大量に流れて家屋を埋めてしまったことが逃げ遅れて死亡してしまった主因でした。

 長年風化したマサ土が大量に存在し、それが一気に流れ出したのだと思います。このとき、山口地区ではもっと多くの雨が降ったのですが、実際の災害としては浸水が起こり、土石流は発生しませんでした。

 防府地区では、この独特の地質環境と降雨によって、あのような大変な災害が発生したことを注意しておく必要があります。

 ともに、大変有益な特別講演で、勉強になりました。とくに、講演後は、教え子のMさんと朴教授に私どもの実験室を見学していただき、さらに意気投合をさせていただきました。

 これを契機に、日韓の新たな交流が開始されるとよいですね。

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