「小さな気泡、マイクロバブル、この技術は、日本よりもはるか南にある、この国にも普及してきているのか。これは、国境など、いとも簡単に突破していく技術なのだ!」
その夜は、こう思いながら帰途につきました。
聞くところによれば、この初老の方は、身体の具合が悪く、一時期は、自宅からほとんど外出できないという状態もあったそうです。
「あんなにお元気そうだったのに、とても、想像ができない!」
何事も緻密に物事を考え抜き、積み重ねていくことが、人並み以上にすぐれた方のようでした。
しかし、以前は、それを行って仕事をすることと、そのためのストレス改善・解消のバランスが取れないために、とてもご苦労をなされたようでした。日ごろの無理が身体に徐々に蓄積されていたのでした。
あるときは、成田から飛び立った航空機のなかで突然具合が悪くなり、その搭乗者のなかには医者がいなかったことから、急きょ成田へ帰っていただき、そのまま病院に入院ということも経験されたそうでした。
歳を重ね、初老を経験するようになると、身体のあちこちが不調をきたすようになります。
長年の無理がたたってしまうのですが、それが改善できないままで仕事を重ねていると、その不調がますます頻繁に起こり、その度に重くなっていくことが珍しくありません。
「私は、この自宅から外に出かけていくことができない身体になってしまったのか。これではますます老いてしまう!」
このように、つるべ落としの夕日のごとく、ひとりさびしく、人生を振り返ることがあったかもしれません。
「それなのに、今は、どうして、このはるか南の地で生活しているのか? これには、なにか訳があったにちがいない」
それから、しばらくして、私は、その訳を尋ねたことがありました。そのときの、この方の返事は次のようなものでした。
「たしかに、長い間、私の体調はすぐれないままで、とうとう、自宅から外出できない身体にまでなっていました。医者にも相談して、いろいろと健康改善を試みましたが、それはなかなか実現しませんでした。
もう、このままで過ごすしかない。こう諦めかけていたときに、知人から、マイクロバブル入浴の話を聞かされました。
それによれば、私の身体に、とってもよいのではないかといわれ、最初は、それを信用することができませんでした。
それに、その時は、仕事上においても難しいことがあり、体調を崩していましたので、いきなり、その装置を利用することができませんでした。
気候がよくなって、身体の調子も徐々によくなり、そろそろマイクロバブルとやらを使ってみようかという、心の余裕も生まれてきましたので、実際に、マイクロバブル風呂というものに入ってみることにしました。
私は、何事もすぐには信用しないタイプでして、約3カ月ぐらいは試してみないと本当に理解できないと思っていました」(つづく)
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