先日、台風19号の襲来で、果たして無事上京できるのかどうかで「やきもき」していたことがありました。

その直撃からは逃れたものの、その風で、我が家の中庭に設置していた簡易テントが大きく傾いてしまいました。

そのテントの傾きを直していたときに、食べごろの「へちま」を2本見つけました。これは上京の折のお土産に丁度よいと思い、それを持参することにしました。

そのヘチマを手提げ袋に入れていると、空港の売店のおばちゃんが、それを見つけて、「これ、何?」と聞いてきたそうです。

「このヘチマをどうするの?」

その大きさは、キュウリよりも一回り大きい程度ですから、たわしにするには小さすぎます。

「これを食べると、おいしいですよ。このサイズが、食べごろです」

「食べごろの、へちま?」

このおばちゃんは、ますます、ふしぎな顔をしていたそうでした。

これが九州の大分空港で起きたことです。おそらく、へちまを食べるという習慣は、九州の本土にはなく、沖縄だけではないかと思います。

ヘチマといえば、子供のころによく銭湯に持って行った「たわし」の一種でした。これを食べるとは、聞いたことはなく、もちろん食べたこともない、これが本土のみなさんの食常識です。

ところが、沖縄では、ヘチマを「ナーベラー」といい、それを古くから食べる習慣がありました。

近頃では、なかなか珍しいものですから、お祝いの時に出されることが多いようです。

数年前に沖縄に行って、友人たちと再会したことがありました。その折、へちまの天ぷらがおいしく人気だと、しきりに勧められたので、それを注文したら、すでに売り切れていました。

よく聞くと、その店では、人気のあまり、あっという間になくなってしまうとのことでした。

まことに残念、ないとなれば、余計食べくなったことを思い出しました。

今年は、夏の終わりから初秋にかけて、そのヘチマが生りはじめ、改めて食べてみると、これが、甘くて上品な味がするではありませんか。ヘチマがこんなに美味しかったのかと再認識することができました。

――― これなら、味に長けている東京人であっても喜ぶに違いにない。

そのお土産を持って、台風が過ぎ去った後の東京に、夕方到着。

早速、マイクロバブル仲間のK1さんと浜松町で待ち合わせ、それから案内されたのが、先に紹介させていただいたレストラン「シェ・ノブ」でした。

ここのマスターのノブさんは、料理の腕は一流、それに創作料理が得意のようで、あっという間に、次から次に見たこともない料理に舌を打つことができました。

しばらくして、ヘチマの話をしていたら、K1さんが、そのお土産のヘチマを取り出し、そのマスターに料理をしてくださるようにお願いしました。もちろん、かれは、それを二つ返事で承知しました。

しかし、ヘチマの料理は初めてのことであり、見たこともなかったので、沖縄での料理法を私に尋ねてきました。

かれの目は、初物に挑戦することで輝き、どう料理するかをすでに考え始めているようでした。

「沖縄では、煮物と天ぷらが多いようです。煮物では、水を使わず、スパムとよく合います。それから、天ぷらの場合は、水分が多いので、薄く輪切りにしてカラッと揚げるのがよいと思います」

こういうと、すぐにみごとな包丁さばきで皮を、こさぎ始めました。

「こうして、こさぐのですよ」

と手振りも含めて教えようとしたのですが、これがなかなか通じません。

それもそのはず、「こさぐ」は九州の方言だからと横のHさん(かれも九州福岡の出身)からいわれ、その不通の訳が解りました。

さて、どのような料理ができるのか、とても楽しみに眺めていたら、さすが、プロですね。フライパンのなかに薄く油を入れ、自家製のベーコンも入れて、ヘチマの輪切りを揚げ始めました。

できあがったのは、ヘチマでベーコンを挟んで、そこに先日紹介させていただいた生柚子胡椒を添えた、とてもおしゃれな「ナーベラーベーコン挟み」でした。

周囲がカラッと揚げられたナーベラーと、塩味のついた、これまた香ばしいベーコンの組み合わせがよく、さらに柚子胡椒の辛さもよくて、すばらしい料理と味でした。

その創作料理をお見せしましょう。写真は、㈱ナノプラネット研究所の大成由音社長によって撮影されたものです。
hetima
まず、最初に私が賞味。口に入れると、ヘチマがサクサクとしていて、さらに噛み続けると、今度はベーコンの旨みが出てきて、このヘチマの甘みとベーコンの塩味のコンビネーションで、何ともいえない高級感が出てきていました。

「これは旨い、ヘチマの甘みにベーコンがよく合いますね。柚子胡椒の作用もすばらしい」

美味しい食材を用いて、それを最高水準の腕で料理する、これによって本当の美味しさが解る、これは、その時にK1さんがしきりに述べられていたことですが、真に、その通りだと思いました。

ヘチマのおかげで、とても、さわやかな一時を過ごすことができました。